【家では元気なのに学校に行けない子】元気なのに学校に行かない子の心理と対処法

習い事には行ける、家では笑顔も多く会話もする、外出もできる、なのにどうしても学校には足が向かない。

「うちは元気な不登校生」なんて報告や相談をよくいただきます。

なかには、放課後になるのを待って、お友達と公園で遊べる子だっています。

そんな我が子を見ておうちの方が困惑するのも自然なことです。

「怠けているだけじゃないの?」

「家の居心地が良すぎるのかしら?」

「もう学校に行けるんじゃないの?」

そこで今回は、学校以外では元気だけど、学校には足が向かない、学校の話をすると急に元気がなくなるお子さんの気持ちを考えながら、おうちの方ができることを考えていきたいと思います。

目次

元気だけど学校に行けない子の心理

人間の心理は複雑で、特に子どもはまだ自分の心理をロジカルに説明することはできません

不登校の原因は複合的に絡み合っていて、ひとことで明示できるものではないことを大前提に、「元気だけど学校に通えない子」の代表的な状況を大きく4つに分けて紹介します。

元気そうだけど登校できないのは

学校に行けるほどのエネルギーが溜まっていない

いじめや不適切指導など学校側にある問題が解決していない

勉強の遅れなどが気になる

学校制度が子どもの個性に合っていない

学校に行けるほどのエネルギーが溜まっていない

学校以外では元気だけど、学校に足が向かない。

その子にとって学校は「膨大なエネルギー」を消費するところであることを理解してあげる必要があります。

学校以外の社会的活動には元気で参加するようなら、好きなことをたくさんして、さらなるエネルギーと自己肯定感をアップさせることを応援して、気長に見守りましょう。

Aくんのケース

頑張り屋さんでまじめな5年生のAくんは、朝、学校に行こうとすると涙が出てきてしまうようになりました。理由はあまりよくわかりません。白い顔をして「つかれた」とだけ言って泣くのです。不登校の知識があったご両親は、ここで無理をさせてはいけないと理解し、Aくんをしばらく休ませることにしました。

初期対応が早かったおかげか、Aくんが落ち込む期間は短く、大好きなサッカークラブの練習には毎日通いました。週5日も練習のあるスパルタチームですが、サッカーが大好きなAくんにとっては一番の楽しい時間。チームメイトとはそれまで通り仲良く遊ぶことができます。勉強も苦ではなさそうなので、家庭教師の先生に来てもらい、楽しく学習することができました。

それでも学校の話は絶対にしようとしません。ひとと関わることに抵抗はない、学習もそれほど嫌いではなさそう。そんなAくんの様子を見て、ご両親は自宅からバスで20分のフリースクールのパンフレットをもらってきました。自然体験や工作、ゲームなどを楽しんでいる子どもたちの写真が載っています。「体験だけでも行ってみない?」というご両親の提案に、Aくんは賛成しました。

フリースクールの体験で、優しいスタッフさん、学校らしくない自由な雰囲気にすっかり安心したAくんは入会を決めました。遊び中心のフリースクールだったので、学習は家庭教師と継続しました。約2年間、フリースクールの仲間とキャンプに行ったり、ボードゲーム、工作、公園遊びなどを楽しんだAくん。小学6年生の秋、中学の入学案内が届くころに突然「中学には行く」と言い出したのです。

中学校は、前在籍校の子が少ない学校を選びました。自分で「通う」と決めたAくん。中学校では、毎日元気に登校し、今では高校生活を楽しんでいます。ご両親は、いまでも「なぜ行けなくなったのか、なぜまた行きはじめたのかよくわからない」とおっしゃいます。「行かない」選択を認めてもらえた経験、「好きなこと」を応援してもらえた経験、「行く」と自分で決めたときに自分で動き出した経験が、今後のAくんを支えていってくれるでしょう。※本人の許可を得て掲載しています

「わからない」を受け入れるのは、難しいです。

「わからない」を「わからない」まま受け入れ、「好き」を応援して見守るご両親。

不登校経験のおかげで自己決定力が育った男の子の体験談を紹介しました。

学校側に解決していない問題がある

いじめや、不適切指導がある場合、いくらエネルギーが溜まったとしても怖くて行けません。

ここで慎重に考えていただきたいのは、本人が「その問題さえ解決すれば学校に戻りたいのか」ということです。

いじめなどの外的要因があった場合、受けたストレスやトラウマは想像を絶するものであり、学校側が解決してくれたように見えても、本人の恐怖心は消えていないことが多いです。特にいじめ経験は、一生フラッシュバックに悩まされるほど深刻なものです。

「いじめさえなくなれば、在籍校に戻りたい」と本人が強く望んでいる場合

 …本人が在籍校への復帰を望む場合のみ、学校に対応をお願いしてください。いじめの事実を伝え、重大に受け止めてもらい、再発防止を徹底してもらう必要があります。まずは担任。担任が動かないようであれば、管理職。管理職が動かないようなら教育委員会。教育委員会は学校サイドを守る傾向があるので、ここからは徹底的に戦う覚悟がないとなりません。警察や弁護士に協力を要請することができますが、この時点で多くの保護者の方は疲弊してしまいます。精神を病んでしまうまで戦うのはおすすめしません。

「在籍校には恐怖心があるが、学校に通いたい」と本人が強く望んでいる場合

  …転校を考えてください。学校がいじめによる転校を認めないケースもありますが、本人が転校を強く望んでいるのならがんばってください。在籍校から「在学証明書」と「教科書給与証明書」をもらう必要があります。引っ越しをともなわずに公立から公立への転校は難しい場合があります。学校がいじめを認めたがらないからです。コストはかかりますが、引っ越しを検討するのもひとつの手ですね。不登校特例校(現・学びの多様化学校)ではいじめを含む様々な要因で登校できなくなった子の受け入れに積極的です。通える圏内に不登校特例校がないか、調べてみましょう。

日本は加害生徒に甘い国です。海外では「いじめた側こそ」が、出席停止になり、カウンセリングを受けるべきという認識が広がっています。悔しいですが、現時点では、親子で心身を壊してまで学校と戦うことはおすすめしません。

次に、いじめが原因で不登校になり、元気を取り戻した後も学校への復帰を選択しなかった子の例を紹介します。

B子さんのケース

おとなしく少し繊細な中1のB子さん、クラスの強気な女の子に嫌味を言われたり「邪魔」と肩で押されるようなことが増えてきました。嘘の噂を流されていることも知っていました。「意地悪な子がいる」とお母さんに打ち明けることもありました。お母さんは、寄り添って話を聞いてくれました。でも、家族を心配させたくないB子さんは「言わせたいやつには言わせておくから、私は大丈夫」と強がっていました。物静かだけど意外と芯の強さがあるB子さんのことだから、とお母さんは「おおごとにしないでほしい」というB子さんの願いをそのまま受け入れました。B子さんは気を張って耐えていたのです。

B子さんが夜眠れなくなりました。夜中に何回もトイレに行きます。いじめはおさまったようです。いじめがおさまったのになぜ??お母さんは困惑しました。夜に眠れないので、朝は起きられません。お母さんが車で送り、遅刻ギリギリで登校するようになりました。あまりにも起きるのが辛いときは、一日欠席してみたりするも、いっこうに良くなりません。トイレに行く回数が尋常ではなくなりました。水道会社のひとが来て「水漏れでもしていませんか?使用量が急激に増えています」と言うではありませんか。

お母さんはB子さんを泌尿器科に連れて行きました。「ストレス性の膀胱炎」という診断が出ました。「最近なにかいやなことありましたか?」と医師がたずねると、コクリとB子さんは頷きました。お母さんが「もう学校には行かせない」と決めた瞬間でもありました。

B子さんのように、親を心配させたくない気持ちが強い子は、無理に無理を重ねてしまいます。そしてあるときドバっとそのツケがまわってくるのです。学校に行かなくなったB子さんは、昼間はずっと布団のなか。夜中に起きてスマホとにらめっこ。という生活になりました。お母さんは心配になり「せめて午前中に起こさなければ」「せめてスマホの時間制限をしなくては」と働きかけますが、お母さんが頑張れば頑張るほど、B子さんは元気をなくしていきます。

そこでお母さんは「見守る」ことの大切さをSNSを通じて知りました。パートに出かけることにしたのです。B子さんの好物の料理をつくって、いつ起きて食べてもいいようにしました。夕方パートから帰ってくるとボーっと起きてくるB子さんに「おはよう」と声をかけ、また好きな料理を用意しました。

映画が大好きなB子さんのために映画視聴し放題のサブスクに登録をし、いつでも観られるようにしてあげたら、これがヒット。悶々と起きている夜が、大好きな映画を観られる夜になりました。昼夜逆転には目をつぶって映画を視聴し放題にした結果が吉と出ました。B子さん、頻繁に映画館へ出かけるようになりました。「平日の昼間の映画館は快適だね」「学生料金のうちにいっぱい行きたい」と前向きなことを話すようになったのです。

もともと芸術全般に興味のあったB子さん、美術館や博物館にも足を運ぶようになりました。そのころには「美術館無料なんだね、学生証ってサイコーだね」「どうせ不登校になったんだから、学校行ってる子ができないことをたくさんしたい」と言って元気を取り戻していきました。出かけたいイベントが朝からだったりすると、早起きができるようになりました。気が付いたら、膀胱炎も昼夜逆転もなおっていました。

中学2年生になったころ「芸術科のある高校に行きたい」と言いました。ご両親と一緒に情報収集がはじまりました。まず、出席日数が少ない学生を受け入れている学校を探さないとなりません。選択肢が限られてきます。それでも探せばあるものです。中学2年生から狙いを定めて準備していたおかげで、みごと合格。高校入学を機に、毎日学校に通えるようになりました。

そんなB子さんも高校を卒業し、現在、美術専門学校の1年生。未だ、いじめのフラッシュバックに悩まされる瞬間もあるけれど、夢に向かってがんばっています。※本人の承諾を得て掲載しています。

B子さんの体験は、いじめ後遺症の深刻さを物語っています。しかし同時に「身の安全」を感じると、子どもは少しずつ動き出せるという希望のメッセージでもあります。

勉強の遅れなどが気になる

長期欠席のあと学校に戻っても授業についていけないだろう。

いまさら友達のグループにも戻れないだろう。

そういった「取り残された」「出遅れた」という不安で、学校に戻れない子もいます。

もし、残された不安要素が学習面だけなのであれば、以下の対策を参考にしてみてください。

「学習面の心配さえなくなれば、在籍校に戻りたい」と本人が強く望んでいる場合

学校に合理的配慮をどのくらいしてもらえるのか、確認しましょう。算数(数学)と英語は特に、学びなおしてブランクを埋めてからでないと次に進めません。ブランクが長いほど、授業内容は辛いものになると思います。補習などをやってもらえるのか。家庭学習の内容を、本人の習熟度に合わせてもらえるかなどを相談してみましょう。家庭学習に親が付き合えるか、家庭教師や個別指導者などとつながれるかなども考えてみてください。それらの配慮があるなら行ってみようと本人が思えるかどうかが大切なポイントです。得られるであろう配慮が、本人の安心につながらないなら、復学は焦らずに、地域の教育支援センター・学習支援センター(適応指導教室)でブランクを埋めるための学習支援を受けることをおすすめします学校から連絡してもらえるようにお願いしてみてください。(自治体によって申込方法は違います。確認してみてください)学校の方針にもよりますが、多くの場合、支援センターの出席を、在籍校出席としてカウントしてもらえます。再登校へのハードルもぐっと下がります。

「学習の遅れが気にならない学校があるなら、通ってみたい」と本人が望む場合

…学びの多様化学校(不登校特例校)が通える距離にあれば、一度見学に行ってみてください。本人の習熟度に合わせて個別指導をしてくれます。疲れた時などは自分のペースで休憩できるような取り組みがなされています。

費用はかかりますが、家庭教師や個別指導塾などでは、習熟度に合わせて学ぶことができます。

近年はICT教育も人気です。ビデオチャットなどで、自宅に居ながら個別最適化された内容を学ぶことができます。

当教室では復学準備のための学習支援も行っています。ただし、本人に無理な負荷をかけないことを方針としています。急いでブランクを埋める過程でお子様が弱っていってしまうのであれば、ペースを緩めます。

学校制度が子どもの個性に合っていない

あれしなさい、これしなさい。あれするな、これするな。

そんなことばかり言い続けていたら、その子はそのうち「息をしなさい」と言わないと言わないと呼吸さえできなくなるぞ。

ジャン・ジャック・ルソー

時代に合わない校則、指示ばかりの教師、30人が一斉に同じことをするよう求められる授業、板書、整列。

教えられたとおりに書かないとマルをもらえないテスト。

同じことを、同じスピードで、同じやり方でやらされることが窮屈で息苦しいと感じる子どもたちがいます。

それでも我慢しながら通っている子どもたちもたくさんいるでしょう。

「我慢できない!」と言える子どもたちは、弱いんじゃなくて、勇気のあるカッコいい子だとも考えられませんか。

Cくんのケース

Cくんは勉強が大好き。特に理科と数学は博士並みの知識があります。学校ではいつもテストは満点でした。ところがあるとき、「板書がめんどくさい」と言って、授業中にノートを広げることをやめました。もう教科書に書いてあることを先生は50分もかけてずっと喋っている。先生が求めたときにしか発言をしてはいけない。ばからしくなってしまったのです。小4のときのことでした。家でも「授業がつまらなくてしかたがない」と涙目で話すこともありました。

算数のテストを全部暗算で解いてしまい、「ひっ算スペースがあるのになぜ使わない?ひっ算がわからないんだろう」と叱られ、休み時間にやり直しをさせられることもありました。Cくんはどんどん反抗的な態度になっていきました。

そんなCくんを、先生は良く思いませんでした。ご両親が呼び出されました。「指示通りに動けないのですが、なにか問題があるのでしょうか」・・・それは発達障害の可能性を暗に伝えるものでした。ご両親は「指示通りに動くように」とCくんを叱りましたが、同時に「指示通りに動けないのは発達上の問題かもしれない」と心配になりました。

児童精神科を受診しました。地域で評判の良いお医者さんです。まず、3回通って医師と面談しましたが「発達障害の特徴は見られない」と言われました。目の動き、意思疎通の特徴などから判断されるようです。次に、発達検査と知能検査を受けました。両検査とも非常に高い数値で、凸凹もほとんどありません。

Cくんは、IQが145ありました。平均値を大きく上回っています。「これでは学校の授業が辛いだろうね」とお医者さん。いささか正直すぎる性質も「個性の範疇」ということで、診断はおりませんでした。

診断がおりなかったことを伝えると、学校の先生からの風当たりはより一層強いものとなりました。発達障害の診断があれば合理的配慮がなされたのかもしれません。Cくんは、学校に行くたび朝から下校時間まで叱られっぱなしになりました。

夜になると「学校に行きたくない!」と泣くようになりました。「面白い勉強がしたい」というCくんの願いを叶えるために、ご両親の情報収集がはじまりました。そしてたどり着いたのが「ギフテッド傾向のある子ども向けの塾」です。(※ギフテッドとは現時点では正式な診断名ではありません)学校へは「しばらく行かないので給食費を止めてほしい」と伝えました。深い話し合いは避けました。学校の先生はCくんのような生徒への理解が皆無だったからです。

Cくんは現在、6年生です。高レベルな学習のほか、プログラミングやロボット作りができる今の塾に満足しており、中学受験などは考えていないようです。「大学は行きたい。中学はいやだ。高校もたぶんいやだ」と話しているそうです。自宅から遠い塾への送り迎えは大変ですが、Cくんの知的好奇心を応援するためにご両親もがんばっています。「高IQ児の困りごとがもっと周知され、学習しやすい環境が増えるように」と願っています。※本人の了承を得て掲載しています。

発達検査は子どもの性質・困りごとを知るうえで役に立ちます。生まれつきの脳の特性を配慮されずに叱られる経験や失敗を重ねることで、2次障害(こころの病気など)を起こしてしまう恐れがあります。怖がらずに受けることで、親子の生きづらさを軽減するためのヒントを得てみては?

発達障害の診断・手帳をもらうことで、本人の特性に合った療育を受けることができます。

診断がおりないほど軽度な凸凹特性やグレーゾーンの子は、療育につながることもできず、普通学級で苦しい思いをするケースが多く報告されています。環境整備や接し方の工夫によって状況がよくなっていく可能性は高いです。本人に合う環境で過ごせるよう情報収集をしてみましょう例:子どもの個性を大切にする学校、学びの多様化学校、学校外の選択肢(フリースクールや塾)など。

※「〇〇で発達障害が治る!!」などといった高額の治療法にご注意ください。発達障害は病気ではありません。投薬によって困りごとが減って生活がしやすくなる場合と、投薬が合わず、環境の工夫によって過ごしやすくなる場合があります。お子様の様子をしっかりと観察しながら、信頼できる良心的な医師に相談しましょう

欧米では、在宅学習(ホームスクール)を正式に認めている国が多くあります。日本ではまだ「不登校」の扱いになってしまいますが、教育機会確保法で認められている権利です。消極的な理由からのホームスクーリングだけでなく、もっと積極的に堂々と活用できるようになるといいですね。

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